マレーシア人と日本人との結婚手続について

東南アジアの中でも、マレーシアは政局が安定して治安がよく、しかも先進国の仲間入りを目指して高度に発展している多民族国家として、独自の立ち位置にあります。年間39万2000人を超える日本人がマレーシアを訪れ(2017年)、約2万6000人の日本人がマレーシアで暮らしています(2018年)。

 

一方、マレーシアからは観光や出張の目的として年間およそ50万1000人(2019年)が日本を訪れています。

また、約1万人のマレーシア人が在留・永住者として日本国内で暮らしています(2018年)。在日マレーシア人の人口は、新型コロナウイルスによる感染拡大が起きる前まで、年々増加傾向にありました。

 

そんな状況の中で、マレーシア人と日本人が出会い、恋に落ちて結婚に至ることも、決して珍しいことではありません。

 

マレーシアと日本の結婚制度の違い

 

マレーシアでは、男性18歳、女性16歳が結婚可能年齢の下限になっています。

ただし、国内のイスラム教徒は、宗教裁判所からの承認があれば、例外的に16歳未満でも結婚を可能とする運用が行われています。

ただ、年端もいかない少女との結婚が横行し、国際的にも批判を浴びていることから、宗派を問わず一律に、男女18歳以上を結婚の条件とする法改正が行われました。

 

日本では、男性18歳、女性16歳が結婚可能年齢と定められてきたところ、2022年4月から、男女ともに18歳以上で婚姻可能と改正されます。その点で、マレーシアの制度と共通点もあります。

 

ただ、マレーシアの結婚制度で最も特徴的なのは、イスラム教徒と結婚する外国人は、自身もイスラム教を信じ、改宗しなければならない法的義務が課されるという点です。改宗を示す証明書を添付しなければ、結婚が公式に認められない運用となっていますので注意してください。

 

日本では、離婚直後に生まれた子どもがいるとして、前の夫と現在の夫のどちらが父親なのかを確定させるため、女性のみに100日間の再婚禁止期間が設けられています。

マレーシアでも、女性イスラム教徒(ムスリーマ)の結婚に関しては、離婚後は3か月間、前夫の死後は4か月と10日間、再婚が禁じられる期間があります。イスラム教徒でなければ、再婚禁止期間がなく、離婚後もタイミングを縛られず、すぐにでも再婚が可能です。

 

なお、隣国のシンガポールとは異なり、マレーシアでは日本と同様、二人だけの話し合いによる協議離婚が認められています。

 

また、マレーシアの結婚制度で特徴的なのは、男性イスラム教徒(ムスリム)に一夫多妻制(重婚)が認められているところです。ただし、日本人女性が第二夫人以降の立場で結婚しようとする場合は、日本国の重婚禁止規定に引っかかりますので、婚姻届が受理されません。どうしても結婚する場合は、日本の国籍を離脱し、マレーシアに帰化しなければならないでしょう。

 

 

次に、日本人とマレーシア人が国際結婚を行うとき、法的に求められる手続きについて解説していきます。

 

これは、日本で先に手続きを行うか、それともマレーシアで先に手続きを行うかで、全体の流れが異なります。

 

先に日本で結婚手続きを進める場合【日本先行方式】

 

<結婚相手のマレーシア国民が、「非イスラム教徒」の場合>

 

まず、在日マレーシア大使館で、マレーシア人の「婚姻要件具備証明書」を取得します。

 

必要となる書類は次の通りです。

  • マレーシア人のパスポート原本
  • マレーシア人の身分証明書(マレーシア国発行のもの)
  • マレーシア人の日本在留カード
  • 日本人のパスポート原本

 

この宣誓供述書をマレーシア国家登録省(JPN)に送り、独身証明書を発行してもらいます。母国のご家族が代理申請して、郵送してもらうことも可能です。

 

この独身証明書(マレーシア外務省の公印があることをご確認ください)を大使館に提出して、婚姻要件具備証明書を受け取ったら、日本の役所・役場に2人で出向いて、婚姻届を提出します。

 

そして再び、マレーシア大使館を訪れて、結婚登録の手続きを行って完了です。

必要書類は次の通りです。

 

【日本人が用意する書類】

  • 婚姻届受理証明書、または婚姻届記載事項証明書
  • 入籍記録がある戸籍謄本
  • 住民票
  • パスポート原本

 

【マレーシア人が用意する書類】

  • 出生証明書
  • マレーシア国発行の身分証明書
  • 日本在留カード
  • パスポート原本

 

<結婚相手のマレーシア国民が、「イスラム教徒」の場合>

 

まず、結婚する日本人にもイスラム教への入信義務がある点を、改めて確認してください。

マレーシア人が婚姻要件具備証明書を取得するため、最初に、国内のモスク(礼拝堂)で日本人が「信仰告白」を行います。イスラム教徒の証人2名の前で信仰告白をすると、正式にイスラム教徒となり、「入信証明書」を取得できます。

 

イスラム教徒の女性(ムスリーマ)は、自分ひとりで結婚を決められず、後見人の同意を必要とする慣習となっています。後見人は、女性の父親が担当するのが一般的です。同意の証拠となる「結婚許可書」を作成してもらいましょう。

 

加えて、イスラム教徒のマレーシア人が国外で結婚する場合には、その故郷となる州の自治体(State Religious Authority)からも結婚許可書をもらわなければなりません。

 

この入信証明書と結婚許可書2通を持って、在日本マレーシア大使館に、婚姻要件具備証明書の発行を申請します。

他に必要な書類は、次の通りです。

【日本人が用意する書類】

  • 戸籍謄本
  • 住民票

 

【マレーシア人が用意する書類】

  • 出生証明書とその写し
  • IDカードと、その写し
  • (離婚歴や死別歴がある場合)離婚証明書または前配偶者の死亡証明書
  • パスポート原本と、その写し

 

婚姻要件具備証明書をもらったら、役所で婚姻届を提出し、大使館に報告的届出を行って完了です。

 

先にマレーシアで結婚手続きを進める場合【マレーシア先行方式】

 

<結婚相手のマレーシア国民が、「非イスラム教徒」の場合>

 

まず、在マレーシア日本大使館で、日本人の「婚姻要件具備証明書」を取得します。

 

必要となる書類は次の通りです。

  • 申請書
  • 日本人のパスポート
  • 日本人の戸籍謄本(3か月以内に発行されたもの)
  • マレーシア人の身分証明書(IC)

 

この婚姻要件具備証明書をマレーシア外務省に持ち込み、認証を受けましょう。この認証手続きにも、日本人のパスポートとマレーシア人の身分証が必要です。

 

そして、マレーシア移民局(出入国管理局)で、日本人が不法在留していないことを証明する在留資格確認書(PERMOHONAN PENGESAHAN PAS BAGI TUJUANPERKAHWINAN WARGANEGARA ASING)を受け取り、国家登録省(JPN)に、次の書類を提出します。

  • 日本人の(認証済み)婚姻要件具備証明書
  • 日本人の在留資格確認書
  • ふたりのパスポート
  • ふたりの証明写真
  • 結婚申請書

 

申請後、21日間の「結婚公示期間」を経たら、21歳以上の証人2名を連れて、再びJPNを訪問し、挙式をします。

挙式が終わると、その場で結婚証明書が発行されます。

 

最後に、在マレーシア日本大使館に、報告的な届出を行って終了です(日本の役所でも可能です)。

必要書類は次の通りです。

  • 婚姻届
  • 日本人の戸籍謄本2通
  • 婚姻証明書の原本とコピー2通+日本語訳2通
  • マレーシア人の出生証明書の原本とコピー2通+日本語訳2通
  • マレーシア人の身分証明書(IC)の原本とコピー2通+日本語訳2通

 

<結婚相手のマレーシア国民が、「イスラム教徒」の場合>

 

最初に、結婚する日本人にもイスラム教への入信義務がある点を、改めて確認してください。

 

まず、在マレーシア日本国大使館で日本人の婚姻要件具備証明書を取得し、マレーシア外務省での認証を受けます。さらに、マレーシア移民局から日本人の在留資格確認書を発行してもらいます。これらの流れは、非イスラム教徒との結婚手続きと共通です。

 

さらに、マレーシアの公立病院において、夫婦となる男女のHIV検査診断書が必要になる場合もあります。

日本の医療機関で受けたHIV検査の診断書でも構いませんが、最終的にその診断書はマレーシア公立病院によって承認されなければ、結婚手続きに使えません。

 

一連の必要書類が揃ったら、JAWI(マレーシア連邦直轄イスラム事務局)で、男女別々のフォーマットの結婚許可申請書を受け取ります。記入したら、婚姻する女性の住居地に所在するモスク行政区の結婚登録官に提出し、挙式の許可を申請しましょう(※申請前に、モスクで結婚許可申請書の事前審査が必要な場合があります)。挙式の7日以上前に申請しなければなりませんので、スケジュールに余裕を持って準備してください。

 

JAWIから結婚許可証が発行されたら、いよいよイスラム式の結婚式を執り行うことができます。

挙式を終えれば、婚姻登録簿が書き換えられ、公式に結婚の事実が登録されます。

 

最後に、在マレーシア日本大使館か、日本の役所・役場に、報告的な届出を済ませて完了です。

 

配偶者ビザが発行されるかどうかは別の問題

 

ただ、マレーシア人との結婚が正式に成立したとしても、そのマレーシア人に日本の在留資格である「配偶者ビザ」が発行されるかどうかは、また別の話ですので、ご注意ください。

 

配偶者ビザの申請のために、結婚とは異なる独自の手続きもありますし、偽装結婚でないことを示すために多数の証拠を提出しなければならない難しさもあります。詳しくは弊所にお問い合わせください。

記事の監修者

Eight Links 行政書士事務所 所長
蜂須賀 昭仁

2016年9月〜
VISA専門行政書士事務所
「Eight Links 行政書士事務所」を開業
専門分野 外国人在留資格申請、帰化許可申請
外国人の在留資格申請を専門分野とし
年間500件以上の相談に対応

講師実績
広島県行政書士会国際業務協議会 担当講師
中華人民共和国遼寧省鉄嶺市(外国人会社設立・経営管理)についての講師

詳しいプロフィールを見る

運営HP
広島外国人ビザ相談センター
https://hiroshima-visa.link/
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